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田舎暮らしの楽しみ
氷の下


【深さ一フィートの雪をかき分け、ついで厚さ一フィートの氷を砕いて自分の足もとに窓を開けます。私は膝をついて水を飲み、目を移して、曇りガラスを通したかのような、やわらかな光に満たされた、魚たちの広い居間を見下ろしています。輝く砂を敷き詰めた池の中は、夏と変わりません。穏やかで、決して波が届かない、夕暮れ時の金色に輝く空のような、のどかな世界です。住む者の、素敵に平静な気質にぴったりの世界です。私たちの頭上にあると言われる天国が足の下にこそ確かにあります。】(第十六章「冬の池」p363より引用)

雪深い冬に、ソローは完全に凍ったウォールデン池を割って中をのぞき込んでいます。これを読んだらその美しさは想像できるような名文ですが、しかしこの光景を自発的に思いつけるかというと、とても無理という気がします。まるで静まりかえった真冬に三十センチの雪と氷の下で魚たちがどうやって生きているのか、これは不思議なことに殆ど考えないのですよね。たしか「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の中の主人公が徐々に神経症になっていくその過程のなかで、冬の結氷した池の下では魚たちはどうしているんだ、と執拗に延々と聞き続けて周りからうるさがられる場面があります。確かに考えても全然おかしくないことだし、その気になればいくらでも調べられることなんですが、案外考えないのですよね。私は氷付いた湖に穴をあけてワカサギ釣りまでしたことがあるのですが、中を覗きこもうか、だなんて思いつきもしませんでした。
 そしてソローはのぞき込みます。真冬の中に夏が見えます、足の下に天国が見えます。


更新日:2006-06-27


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