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田舎暮らしの楽しみ
真冬の散歩


【私は、どんな豪雪だろうと、猛吹雪だろうと、散歩を控えるつもりは微塵もありません。冬一番の深雪をついて、ブナ、キハダカンバ、あるいは何本かのマツなど、かねて見に行きたいと望んでいた大好きな木と会うために、よく八〜十マイルの道のりを歩きました。】(第十四章「昔の住民と冬の訪問者」p336より引用)

30キロ前後ですよね。踏み固められていない新雪の中を三十キロというのは、大抵の人には一日かけても歩ききれないのではないかと思います。少なくても「散歩」という名で呼ばれるものではないですよね。
 さーっと読み飛ばしてしまうとただの変わった人みたいなのですが「森を読む」を読んだ時に初めて「これだったのかな」と思いました。
 この本は大きくて立派な木々が小さな小さな種子を飛ばして、それが木になり、森になる、というその過程を自分の目と足で何年も何年もかけて観察してまとめた、科学者ソローとしての文献です。書かれた年代が「ウォールデン」よりかなりあとなのですが、おそらくスケールの大きさから考えてこの観察はすでに始まっていたのではないでしょうか。事細かにスケッチを残していることからも、単に物思いにふける散歩ではなかったことは伺えます。木を見に、森を見に、種子を見に、生命の活動を見に。本当に具体的に見たいものがあって調査にでかけていたようです。
 雪の上を歩いていると、確かに私でも種子が気になるのです。カンバ類の長い房のような種とか、カエデのプロペラのような種とか。みんな枯れて乾ききったような茶色なのですが、でも何もない真っ白一辺倒の雪の上にさーっと目立つほど大胆にばらまかれた命の赤ちゃんなのです。なんだか凄く新鮮で感動する光景です。ソローはそういったものがもっともっと沢山目にとまったのでしょう。冬だからこそ、厳しければ厳しいほど、躍動を内に秘めた確実な生命活動が行われているのが嬉しくて嬉しくて、気になって仕方なくって、出掛けていったんじゃないか、と私は思います。


更新日:2006-06-27


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