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田舎暮らしの楽しみ
拾い物


【家に戻った私は昼に訪問者があって名刺を残して行ったのを知りました。名刺と言っても、ここでは、花束とか、常緑の植物で作ったリースとか、鉛筆で名前を記した黄色いくるみの葉とか、木切れです。森に入ったことがあまりない人は、よく、森で何かを手に取り、いじってたのしみながら道をたどります。そして私の家の近くを通りかかると---わざわざ訪れてくれた人のことも、たまたま通りかかった人のこともありますが---それらを残していきます。】(第五章「独り居」p166より引用)

森の家に帰ると留守のうちに誰かが置いていった花束がテーブルの上にのっている、だなんて、ああなんて楽しげなのだろう、と想像するだけで微笑んでしまいます。私も自然の中へ入っていくと必ず何かちょっとしたものを連れて帰ってきてしまう癖があります。木の枝や葉や草なんかを。名前を調べる為の時もあるし、絵を描く為の時もあるし、単に別れがたくて連れてきてしまうこともあります。本当はカメラでも持ち歩いて、現物はその場にそっとしておくのが良いのかもしれませんが、手で触りたいのですね。どれくらい固い柔らかいとか、どんな匂いとか。赤ちゃんのように触ってみたくて手を伸ばしてしまいます。ソローは【一輪の花の落とし方、草のむしり方、置き方なんどの、ちょっとした痕跡から、たいていは男女の別、年齢、それに個性も察知できます】(p167)とも書いています。きっと私の触りたがりなんかもすぐ分かるのでしょう。
草のむしり方でその人がどんな人かわかる、というソローの人間に対する注意は凄い、と思います。この「独り居」という章は”やっぱり独りがいいよ”ということが書かれた章なのですが、テーブルの上の上の花の置き方を見てどんな人が来たのかをあれこれ想像して楽しんでいるソローからはとっても健康な「人恋しさの情」が感じられるように思います。


更新日:2006-06-27


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