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ソロー著「メインの森」
「メインの森」を読む


ここでの文章を書くために普通よりちょっと集中してウォールデンを読んだのですが、大変好きな書物であるにもかかわらず七章くらいで飽きてきて、そこから先に進まなくなりました。
 なんと困ったことよ、と思いながら息抜きの意味もあって図書館へ出掛けて行き(田舎の小さな図書館です)、司書さんに「ウオールデン以外でソローの本が何かあったら貸してください」とお願いしたところ、たまたま所蔵されていたのが「メインの森」でした。それほど深い期待をよせて読み始めた訳ではなかったのですが、これが読み始めるとあまりにも面白いのにびっくりしました。野田知佑氏のユーコン紀行を読むようでもあり、シートン動物記を読むようでもあり、ロビンソンクルーソーを読むようでもあり。本当に少年の心になって一気に読んでしまう一冊でした。
 「思想家」のイメージばかりだったソローという人がこんなにも野性あふれる真の冒険家だとは、正直予想外でした。
 「ウォールデン」の中にも、メインの森に二週間出掛ける時にも家に鍵をかけることはなかった、という文章でこのメインへの遠征にほんの少し触れています(第八章「村」)。その文章の何気なさから推し量って私は普段している散歩にテントと若干の炊事用具を加えて足を伸ばした程度だろう、と思っていたのです。
 実際のこの旅では、カヌーに似た小型の舟に乗りいくつもの川と滝と湖を越え、まともな地図のない前人未踏の道なき道を手探りで進み、地面の上にヒバの葉を敷いて眠り、木こりやインディアンから森で生きる術を学ぼうとし、高い山に登り、世界を生のまま観察し、思索をします。
 ソローはこの奥深い原野で「ウォールデン」にも書かれている野性への憧れを語ります。
【私は思う。この私でも、自分が生きるために必要な魚と獣をとって、森の中で一年を送ることはできると。これは自分が大地に育てたものだけで暮らす、哲学的な生活に次いで魅力がある。】
そしてその上で「人間として良く生きることへの憧れ」について以下のように強く欲求しています。
【いったいもっと無邪気で罪がなく高貴な仕事のために、この人けのない広大な原野で数週間あるいは何年間をおくろうという人はいないのか?この自然を絵に描き、謳うために鉛筆を持参する人は斧や銃を持参する人1000人にたいしてたったひとりなのだ。】
ムースを狩り、大地の上に毛布一枚で寝るソローが原野の奥から憧れ呼びかける暮らし方が「無邪気で罪がなく高貴な仕事」なのだ、と知ると「ウォールデン」の生活の光景は一層の生彩を放ってくるように思います。



更新日:2006-06-13


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